交通量が少なく走りやすい間瀬峠
長瀞と児玉をつなぐライダーにとっての隠れた名ルート
埼玉県には秩父方面へ抜ける有名な峠道がいくつも存在しますが、国道299号線や国道140号線といった主要幹線道路は、休日ともなれば多くの車や観光バス、ツーリンググループで行き交います。
そんな喧騒を離れ、自分のペースでじっくりと走りを堪能したいライダーにとって、貴重な選択肢となるのが間瀬峠(まぜとうげ)です。
秩父郡長瀞町と本庄市(旧児玉町)の境に位置するこの峠は、県道287号長瀞児玉線の一部であり、地元の人々の生活道路や、知る人ぞ知るツーリングルートとして利用されています。
最大の特徴は、何といっても交通量の少なさです。
主要な観光地へのアクセスルートから少し外れているため、通過する車両は比較的少なく、前走車に詰まってストレスを感じたり、後続車に煽られて焦ったりすることがあまりありません。
そのため、ワインディング走行に慣れるためのコースとして、あるいはベテランがマシンの調子を確かめながら流すルートとして、密かな人気を集めています。
かつては漫画作品の舞台になったことでも知られていますが、現在は落ち着いた雰囲気を取り戻しており、深い森の中を縫うように走る、静かで趣のある峠道となっています。
多彩なコーナーと路面状況が操作する楽しさを教えてくれる
間瀬峠が練習に適していると言われる理由は、その道路線形にあります。
峠の全長はそれほど長くはありませんが、その中に低速のヘアピンカーブから、リズムよく抜けられる中速コーナーまで、大小様々なカーブが凝縮されています。
ただ漫然と走るのではなく、コーナーの手前できっちりと減速し、視線を出口に向け、スムーズにアクセルを開けて立ち上がるといった、ライディングの基本動作を繰り返すにはうってつけの環境です。
道幅は決して広くはありませんが、狭すぎるということもなく、1.5車線から2車線程度が確保されている区間が多いのも安心材料のひとつです。
対向車とのすれ違いに極端に神経をすり減らすことなく、ライン取りを考えながら走ることができます。
また、路面コンディションについては、全線がきれいに舗装されたサーキットのような道というわけではありません。
所々に路面の継ぎ目や、過去の補修跡、滑り止めのためのグルービング(溝)加工などが見られます。
しかし、こうした変化のある路面こそが、公道での対応力を磨く良い教材となります。
荒れた路面を避けたり、凹凸でサスペンションがどう動くかを感じ取ったりしながら走ることで、バイクをコントロールする技術が自然と身についていくはずです。
峠越えで見える景色
走りに集中できる間瀬峠ですが、ふと足を止めたくなるような景観の美しさも持ち合わせています。
ルートの大部分は木々に囲まれた森林浴コースのような雰囲気ですが、標高が上がるにつれて視界が開けるポイントがあります。
特に長瀞側からのアプローチでは、眼下に秩父の山並みやのどかな集落を見下ろすことができ、開放感抜群です。
頂上付近は切り通しになっており、ここを越えると景色が一変します。
児玉側へ下っていく道中は、関東平野方面の広がりを感じさせる眺望が楽しめます。
新緑の季節には鮮やかな緑のトンネルを、秋には燃えるような紅葉の中を駆け抜けることができ、季節ごとの表情の変化も豊かです。
交通量が少ないため、見通しの良い退避スペースがあれば、エンジンを止めて静寂に包まれる時間を楽しむのも良いでしょう。
鳥のさえずりや風の音が聞こえる中で、缶コーヒーを飲んで一息つく。
そんなツーリングの原風景ともいえる時間が、ここには流れています。