勝願寺
徳川家康が認めた名刹。三つ葉葵が輝く勝願寺の歴史
埼玉県鴻巣市と聞いて、多くの埼玉県民が真っ先に思い浮かべるのは運転免許センターかもしれません。
しかし、中山道の宿場町として栄えたこの街には、徳川家康に深く愛された由緒ある寺院が存在します。
それが、浄土宗の古刹「勝願寺(しょうがんじ)」です。
鴻巣駅から徒歩圏内に位置しながら、一歩境内に入れば静寂と歴史の重みが漂うこの場所は、歴史好きのライダーや御朱印集めを楽しむ人々にとって見逃せないスポットとなっています。
鷹狩りの縁で結ばれた家康との絆
勝願寺の最大の特徴は、寺の至るところに見られる徳川家の家紋「三つ葉葵」です。
これは単なる装飾ではなく、実際に徳川家康から特別に使用を許可されたという確かな歴史に基づいています。
伝承によると、文禄2年(1593年)、家康が鴻巣周辺で鷹狩りを行っていた際、たまたまこの寺に立ち寄りました。
当時の住職であった円誉不残(えんよふざん)上人と談笑する中で、その深い学識と人柄に感銘を受けた家康は、その場で帰依し、寺の檀家となることを約束したといわれています。
さらに家康は、近隣の領主たちにもこの寺の檀家になるよう命じ、寺領を寄進するなど手厚く保護しました。
この強力なバックアップにより、勝願寺は関東十八檀林(僧侶の養成機関)のひとつとして隆盛を極め、多くの学僧がここで修行に励んだと伝えられています。
朱塗りの壮大な仁王門をくぐり、参道を進んだ先にある本堂の屋根や幕に輝く葵の紋は、400年以上続く徳川家との深い縁を静かに物語っています。
歴史ファンを唸らせる墓所の数々
境内を散策すると、歴史の教科書や大河ドラマで耳にしたことがある著名人の墓所が多いことに驚かされます。
中でも注目なのが、戦国随一の知将・真田昌幸の孫であり、真田信之(幸村の兄)の三男である真田信重の墓です。
信重の墓の隣には、その妻の墓も寄り添うように建てられています。
また、信之の正室であり、徳川四天王・本多忠勝の娘としても知られる小松姫(稲姫)の分骨墓もあります。
小松姫は生前、勝願寺の住職に深く帰依していたことから、没後に分骨されたと伝えられています。
真田家ゆかりの人物が、信州から離れたこの鴻巣の地で眠っている事実は、歴史ファンにとって感慨深いものがあるでしょう。
さらに、江戸初期に利根川や荒川の治水工事を行い、関東平野の基礎を築いた名代官「伊奈忠次」とその一族の墓所や、仙石秀久の墓なども境内にあります。
これだけの武将や偉人たちが集まっていることは珍しく、彼らの足跡を辿って墓マイラーが訪れる聖地ともなっています。
「人形のまち」鴻巣の風情ある街歩き
勝願寺への参拝と合わせて楽しみたいのが、鴻巣のもうひとつの顔である「雛人形」にまつわるスポット巡りです。
鴻巣における人形作りの歴史は古く、江戸時代初期の約380年前に遡ります。
当時、京都の職人から技術を学んだことがきっかけとなり、やがて鴻巣雛(こうのすびな)として関東一円に知られる一大産地へと成長しました。
現在でも「人形町」という地名が残り、旧中山道沿いには老舗の人形店が軒を連ねています。
ショーウィンドウに飾られた煌びやかな雛人形や五月人形を眺めながらバイクを流すだけでも、独特の風情を感じることができます。
街の歴史をより深く知りたい場合は、勝願寺からほど近い場所にある鴻巣市産業観光館「ひなの里」へ立ち寄るのがおすすめです。
ここでは、明治期に作られた貴重な鴻巣雛や、職人の道具などが展示されており、伝統工芸の緻密な技を間近で見学することができます。
また、毎年2月から3月にかけて開催される鴻巣びっくりひな祭りも見逃せません。
メイン会場となる鴻巣駅直結のショッピングモールには、日本一の高さを誇るピラミッドひな壇が登場し、数千体の人形が飾られる圧巻の光景は全国的なニュースにもなるほどです。
この期間は街全体が華やかな雰囲気に包まれるため、春のツーリングには最適のタイミングといえるでしょう。
アクセスとバイクの駐車スペース情報
勝願寺は国道17号線から少し入った場所にあり、アクセスは非常に良好です。
寺の敷地内には参拝者用の広い駐車場(無料)が整備されており、仁王門の右手側や境内東側から進入して駐車することが可能です。
四輪車用のスペースがメインですが、敷地が広いため、端のスペースを利用してバイクを停めることができます。
ただし、お盆やお彼岸、毎年11月に行われる「お十夜(おじゅうや)」という法要の時期は大変混雑するため、利用が制限される場合があります。
もし、勝願寺だけでなく周辺の街並みや、ひなの里もゆっくり散策したい場合は、ひなの里にある見学者用の無料駐車場を利用するのも賢い選択です。
歴史ある寺院と伝統工芸の街、鴻巣。
次の休日は、家康も眺めた景色に思いを馳せながら、埼玉の奥深い歴史を探訪してみてはいかがでしょうか。